チベットへの中国同化政策 |
これに対し、中国は軍隊を動員して武力でもって制圧し、流血の惨事となった。
軍隊が民家一軒一軒に立ち入り、ダライ・ラマの肖像画があるかどうか家さがしし、あれば家人を拘束していると伝えられている。
この事件で中国大本営は死者は13人、亡命政府は80人、と発表は大きくくいちがっている。
しかし、当局が外国メディアを完全に閉め出しているので、真偽のほどはわからない。
当局にとって、牙をむいたおのれの姿を世界にさらしたくないとの意図が見え見えだ。
これは、89年の天安門事件を思い起こさせるものであろう。
天安門広場で、逃げまどう学生たちを戦車と銃で制圧し、2,000人の死者を出した虐殺(ぎゃくさつ)事件は記憶に新しい。
あれは、虐殺というより人間の屠殺場(とさつじょう)であった。
西側メディアによるその生々しい地獄絵は、世界のひとびとを震え上がらせた。
中国人が、同じ中国人の学生を殺すのである。
人間の本性は悪であるとする「性悪説」を、あらためて意識させられた。
これにくらべてこんかい映像がないのは、外国メディアを閉め出していること、インターネットの接続を遮断する措置を当局がとったことなど情報統制をしているからにほかならない。
もともと自治区とは名目だけで、チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世は現在もインドへ亡命を余儀なくされている。
中国共産党は、チベット族の宗教、伝統、文化、言語を失わせ、漢民族に同化させる政策とってきた。
これらは、チベット人のアイデンティティー、民族の尊厳を根底から否定することである。
さらに、漢民族のチベットへの大量移住を奨励し、住民構成のうえでも純化を図っている。
数年前シルクロードの旅で新疆(しんきょう)ウイグル自治区をおとずれたことがあるが、そこ住んでいるのは西洋人のウイグル族であり、顔かたち、言語、生活習慣が漢民族とはまったく異なっており、ここも中国? と思ったものだ。
かつて明治政府は、明治の初めに琉球(りゅうきゅう)を日本に併合し、琉球の方言を使うことや琉球に伝わる歌をうたうことをきびしく禁じるという皇民化政策をとった。
さらに大陸に侵攻し、満州では傀儡(かいらい)の満州国を建設し、台湾では統治した。
そこでは現地語を使うことを禁じ、日本語を話すことを強制した。
これらは、民族の誇りと尊厳をを喪失させるものにほかならない。
ナチスは、民族浄化の名のものにユダヤ人を強制収容所に送り込み、毒ガスによる大量虐殺を行なった。
これらは、大国の覇権主義であり、おごりそのものであるとともに、裏返せば他民族を支配することの限界を表していると解釈することもできよう。
これらの歴史に学ぼうとしない中国共産党。
指導者が背広姿から人民服に着替えたときが本性を現したときで、そのときこそが危ない。
求菩提山