冷え性 |
ひといちばい寒さに弱いこちらにとっては、それがつらい。
とくに寝るときには、腰と足がつめたくてぐっすり眠れない。
そこで、湯たんぽを使っている。
この湯たんぽは、わが家に伝わっている湯たんぽである。
長さ26センチ幅14センチの円筒形で、これは陶器でできている時代物だ。
注ぎ口は、片方の上についている。
いったい、何代先のものだろう?
こちらの冷え性は、生まれつきのようだ。
体質的に毛細血管がひとより細いらしく、そのため血液のめぐりがよくないらしい。
子どものころは、足や指、それに耳たぶがしもやけになった。
しもやけは、正確には凍傷のうちのいちばん軽い症状だという。
健康診断を受ける際、血液をとるため静脈に注射をされる。
親指を内側にして手のひらを握りしめるが、静脈が皮膚から浮かびあがらない。
看護師が、アルコールを含ませた脱脂綿でこすり、ひっぱたく。
「チクッとしますよ」といって、注射器をプスリとやる。
痛い。
ところが、針は静脈に刺さっていない。
注射針を抜くと、前よりはげしくひっぱたく。
「チクッとしますよ」といって、またも注射器をブス。
またチクッとする。
またも、失敗だ。
看護師もあせり、必死の顔をしてる。
彼女のひたいに、汗が浮かんでいる。
三度目で、やっと命中した。
赤黒い血が、注射器のなかで渦巻いている。
おかげで、一度に3年分の注射の痛みを味わされた。
求菩提山