1歳4か月齢の5期生の仕事ぶり |
(1歳3か月齢の5期生の仕事で捕獲された50㎏のメスイノシシ)
(後ろから潜ってイノシシの女性器を咬みにいくU)
(6か月齢のポチ)
猪犬:求菩提犬初代先犬のLeeの直子で1歳3か月齢の5期生の次郎(♂)と二代目U(♀)、それに仕込み中の6か月齢のポチ(♀)
獲物:50㎏のメスイノシシ
真竹の林に3匹の犬を放す。
きょうの犬は、求菩提犬初代先犬Leeの直子で1歳3か月齢の5期生の次郎(♂)と二代目U(♀)の2匹の同胎犬、それに6か月齢になった子犬のポチ(メス)である。
この5期生は、夢職庵(むしょくあん)四天王のうちの2匹である。
ここのところ、この5期生の方がいい仕事をするようになった。
イノシシと遠い間合いで勝負するところが、こちらとしては大いに気に入っている。
なぜなら、その間合いなら犬がケガをすることはないからである。
それにこの5期生は、イノシシを攻めるときの自分のポジションの取り方がうまい。
常にイノシシより高い位置から吠えて攻めたてるからである。
これなら、イノシシが体当たり攻撃ができず、たとえ体当たり攻撃に出ても犬はこれを躱(かわ)すことができる。
もう、次郎が吠え出した。
しかし、ここから400メートルも離れたところの高い大尾根付近である。
供犬のUも、いっしょである。
こちらは小尾根にいるので、そのまま子尾根の稜線をのぼる。
やっと、大尾根にたどり着いた。
ここから左折して大尾根の稜線を高い方へたどる。
だんだん犬たちの吠え声が近くなるが、一か所で吠えているのではない。
ということは、イノシシが逃げているのである。
2匹は、それに追跡しているようだ。
犬の吠え声が真下に来たら、こちらも寄りつくつもりである。
ようやく、犬たちの吠え声の真上にきた。
ここから、真下に下っていく。
現場は、シイの大木の林のため下地はすいていて見通しはいい。
しかし、きびしい角度の斜面で、歩きにくい。
2匹の犬は、下を向いて吠えている。
犬たちの一段下に、黒いイノシシが歩いている。
急な斜面を巻いて逃げている。
イノシシの動きは、走るふうでもなく、ゆっくり歩いている。
相変わらず2匹は、イノシシより高い位置をイノシシと平行に歩きながら吠えている。
そこで、こちらは先回りして待つことにする。
イノシシが、こちらより下のけもの道を歩いてきた。
イノシシの顔面を狙って引き金を引く。
イノシシがのけぞって倒れ、急斜面をすべり落ちていく。
それを、3匹が追っていく。
イノシシが下のほうで止まった。
2匹の若犬が、咬みつく。
6か月齢のポチは、咬みつくことを知らないようだ。
イノシシの周(まわ)りで吠えている。
ま、はじめはこんなものでいいだろう。
弾の当たりを吟味すると、左目の下を撃ち抜いていた。
ここのところ、ピンポイントで命中させることができるようになった。
それも、イノシシが正面を向いているときには鼻柱に、横向きなら顔面にヒットさせている。
これにて作戦終了だ。
夢職庵は、すでに完全に量産体制に入っている。
これだと、この辺りではイノシシは絶滅危惧種になるのも時間の問題であろう。
この5期生の仕事ぶりを見ていると、イノシシに対して咬むでもない、それかといって吠えて止めているのではない。
イノシシの上の段をイノシシと並行して追跡し、常に5メートルから10メートルの間合いをとって吠え立てるだけである。
これでは、つきまとい、つまりストーカーである。
それだと、イノシシは走って逃げず、犬もイノシシの反撃を受けない。
まことに省エネ猟といえる。
この点は1期前の4期生と異なる。
4期生は、ノシシに肉薄する攻撃パターンをとる。
ところが、その後そのイノシシが起き上がって逃げた。
それを5期生は追っていき、後ろからもぐって女性器を咬むという攻撃に出た。
これは、意外な展開となった。
話には聞いたことはある。
オスイノシシの睾丸、メスイノシシの女性器を咬み破る犬は、咬み止め犬としては最高の芸であるという話である。
そこが急所であるだけに、イノシシに与えるダメージは決定的なものであることからそう言い伝えられてきたのであろう。