福岡第3次遠征猟二日目ー吠え止め、追い止め |
猪犬:求菩提犬初代先犬のLee(♂)と二代目先犬の黒(♂)のツートップに7ヶ月齢の赤(♀)
獲物:45㎏のメスイノシシと60㎏のオスイノシシ
きょうは、福岡第3次遠征猟の二日目である。
きのうは、1頭しか穫れないという不本意な成績で終わった。
しかし、これも猟期が終盤近いというこちらにとって不利な条件下なのでしかたがないのかもしれない。
なぜ猟期の終盤になるとこちらにとって不利な条件下かというと、シーズン中に獲られた数だけ生息数から差し引かれるので獲物の絶対数が減っているからである。
そのうえ生き残っている獲物も、いくどか犬に襲われたりハンターに撃ちかけられたりしている。
そのため獲物は過敏になっており、犬が近づけばいち早く危険を察知して逃げる。
それだけに、この時期はハンターの危機管理能力と犬の実力が試されるときでもある。
きょうも、地元の後輩に案内されて山に入る。
この時期には、追われたイノシシはこのあたりでいちばん標高の高い山に集まるという。
この山は、傾斜がきびしい。
それに巨岩というか巨石というか大きな御影石が点々と露出している。
獲物は、この下に寝ていることが多いという。
なるほど、御影石の下にはくぼんだイノシシの寝た跡がある。
それらの寝屋は、雪や雨のときの雪よけ雨よけになり、そのうえ風もよけてくれる。
そのうえ、ここでは天敵である犬より背後から攻められることがないという最大の利点がある。
7合目ほど登ったとき、上のほうで黒の吠え声がきこえてきた。
そのうち、Leeの吠え声もきこえだした。
さらに、仕込中の赤の吠え声もきこえてきてにぎやかである。
巨岩の間を縫(ぬ)ってのぼる。
しかし、こんな急傾斜は登るのに骨が折れる。
後輩は、「石の下の寝屋に寝ているので逃げんですよ」という。
犬たちの吠えているところを左手に見て、さらに直登して上へ回り込んで大きな岩の上にあがる。
見下ろすと、大岩の下で3匹がイノシシに絡(から)んでいる。
これでは犬に当たる危険性があり銃を撃てない。
そのうち、イノシシが下向きに逃げた。
これを、3匹が追いすがる。
すると、いつの間にか後輩が左横から寄ってきた。
犬が咬みにいって、イノシシの動きが止まった。
後輩が近づき、イノシシの脇腹を刺す。
これで一丁上がりとなる。
45㎏ほどのメスイノシシである。
時間も早いので、もう1頭成敗することになった。
そのまま尾根まで登り、こんどは反対側を狩る。
この反対側は樫(カシ)の木が多く、その実がたくさん落ちており、まだ実の詰まったものもある。
その樫の木は、幹の表皮が剥がれそうになった樫の木で何という名前かはわからない。
こちら側が南面となり、ここがイノシシの餌場になっており、先ほど狩った尾根を越えた北側が寝屋だという。
それにしても豊富な餌(えさ)場である。
しかし、肝心の獲物は寝ていない。
もうほとんど獲り尽くされてしまったのか?
谷で水をくみ、冷たい水で一息入れる。
「後、5分で道路に出ます」という。
小尾根の尾根を降りていると、先を行くLeeと赤が走って下っていった。
なにか見つけたのか?
すぐに右側の谷からLeeの吠え声がする。
出た!
後輩が、尾根伝いに急いで走って降りていく。
犬の吠え声が、下へ下へ移動していく。
そこで、獲物が下向きに逃げていることがわかる。
砂防堤の手前から、向かいの山に逃げ込んだようだ。
後輩が、向かいの尾根に取りつく。
赤が、彼といっしょに登っている。
その小尾根の向こう側で、Leeと黒が獲物に追いついたらしくはげしく吠え立てている。
しばらく間があって、ダーンと銃声がした。
犬の吠え声が止まったので、仕留めたようだ。
小尾根に登ると、その下は道路で、犬が咬むときの口ごもった声がきこえる。
下を走る道路に、後輩が降りていた。
撃たれたイノシシを、下の道路に落としたという。
60㎏ほどのオスのイノシシである。
猟期も、残すところ3日となった。
したがって、福岡遠征もこれで終りとなる。
来シーズンは、この地域への遠征が主戦となるであろう。