Pのデビュー |
夢職庵(むしょくあん)の看板犬の求菩提犬(くぼてけん)・初代先犬の直子であるPをきょうから猟野にデビューさせる。
デビューといっても、大げさなことではなく山に連れていって親犬がやる狩の見習いをさせるのである。
Pは、きょうで113日齢になるメスで、一匹だけ生まれた子である。
母親は、滝の谷系のビーグルのQである。
耳は垂れていて大きく、ビーグル特有の耳であるので顔は母親に似ているといえる。
毛は全身が茶色の父親似であり、尻尾の上面に黒が出ているのが求菩提犬の証(あかし)である。
現在の体重は9㎏だが、脚は骨太であるのでまだ大きくなると思われる。
こちらの目論見(もくろみ)としては、体重は16㎏前後を望んでいる。
というのは、そのくらいないと最終段階の咬み止めでは通用しないからである。
それより体重が軽いと、喰らいついてもそのまま走られる。
しかし、それより大きいとケガをしたとき犬を抱えて運ぶのに苦労する。
そこで、咬み止めの前の段階である吠え止めの段階で決着をつけたい。
咬み止めの段階までいくと、どうしても犬がケガをするからである。
それに今回のように、こちらが指をイノシシに咬まれて骨折するという不名誉な負傷をするということもある。
それには、まず寝屋での射撃の腕をみがくことがいちばんの課題である。
そこで仕留めれば、犬のケガ、こちらのケガがなくてすむ。
確かに、わずか4ヵ月齢に満たない子犬を山に引くのは大きな賭(か)けである。
昨シーズンも、117日齢で二代目候補である八が玉砕した。
しかし猟期もきまっているので、あえてきょうから山に引く。
ここで玉砕するのもその犬の宿命だと、割り切っている。
虎は千尋(せんじん)の谷にわが子を落とし、それでも生きている子だけを育てるという。
猪犬は、所詮(しょせん)虎に準じる生き物と考えているからである。