新兵器の金属糸のデビー |
ふたりで午前0時まで話し込んだ。
未明から小雨になった。
雨が降れば、釣りに行く気になれない。
きのうも雨で川に入っていて寒かったからだ。
旅先で風邪でもひけば、やっかいなことになる。
それでも、小林兄じゃが来た。
きのう仕掛けを使い切ってしまっている。
前野さんが金属糸を編んでくれるというのでお願いする。
金属糸を編むには、専用道具がいる。
かれが、その専用道具を使って器用に編む。
0.15という極細の糸を編むには、目がよいことが第一条件だ。
かれは、よく編むものだと感心する。
専用道具は編み込みの仕組みさえわかれば、その気になれば作ることはできなくはないだろう。
こちらも自宅に帰ったら、専用道具つくりに挑戦してみよう。
しかし、目がわるくそのうえ手先が不器用なのでうまく編(あ)めるかどうか不安だ。
かれの編んでくれた金属糸を使ってみる。
これを使ってみた感想は、感度がきわめていいことである。
オトリ鮎の動きが手に取るようにわかる。
たとえば、ラインが石をこすっていることや3本錨針が石を引きずっていることがわかるのである。
この金属糸のおかげで、3匹つづけて野鮎をかけることができた。
こちらだけ掛かるので、近くに立ち込んでいる人たちがだんだん寄ってくる。
こんなことは初めてで、気分がいい。
きのうまでの弱気が吹き飛び、なんだかやれそうな気持ちになる。
長いトンネルの中で、わずかな明かりを見つけたような思いがする。