手打ちそばー「かえし」をつくる |
そばは、手打ちのそばである。
すでに、市場では新そばが出回っているからである。
その新そばを、石臼(いしうす)でひいてもらう。
石臼で挽(ひ)かないと、そば粉が熱を持ってしまい、そば本来のもつ風味をそこなうからである。
業者に電話して、あすの午前中までに準備してくれるよう頼んだ。
そばといえば、北海道の幌加内(ほろかない)を思い出す。
幌加内は日本一のそばの産地で、見わたすかぎりそば畑がひろがっていた。
水田も波うつ丘も、白いそばの花で覆(おおわ)れていた。
ところが、こちらはそば打ちを最近やっていない。
そば打ちの技術がまだ温存されているかどうか不安を感じる。
そこで、そば打ちの本を本棚からさがし出し、読み返す。
この本は何回も読んだので、ページもちぎれている。
さらに、北海道の道の駅「あいおい」の健ちゃんに教わった「10割そば」を打つこちらにとっては新しい技法ともいえるやり方を記録した写真とそのときの録音をききかえす。
この方法だと、そばが切れないのである。
津別(つべつ)のシラカバの立ちならぶ中にラッセル車のたたずむのぞかな風景と、健ちゃん、三島さん、それに手づくり豆腐をつくるばあちゃんがなつかしく思い出された。
いよいよ作戦開始だ。
まず、「かえし」をつくる作業からはじめる。
「かえし」とは、そばつゆのもとになる醤油のことである。
みりんを沸騰させ、アルコールを吹き飛ばす。
念のため、鍋の中でライターの火を入れる。
すると、青白い炎が勢いよく立ちのぼり、アルコールが燃えるのがわかる。
これに所定の量の砂糖を入れ、砂糖がとけて透明になるまで焦がさないようにまぜる。
透明になったら濃いくち醤油を入れ、温度計を入れて80度になるまで加熱する。
表面に金色の膜がはったら、火をとめてそのまま冷やすと「かえし」のできあがりだ。
原風景を求めてオートバイの旅