湯たんぽ |
暖かいふとんの中から出たくない。
「早う起きんか、学校遅れるぞ」と母から叱られる。
ふとんの中から、湯たんぽを取り出す。
まだ温かい湯たんぽを抱えて、井戸端にいく。
外は、いちめんの雪。
湯たんぽの栓(せん)をはずして、ながい三本脚の洗面桶の上で逆さにする。
どぼっどぼっと音をたてながらお湯が出る。
これで顔を洗う。
気持ちがいい。
そのお湯を捨てると、積もった雪がそこだけとけて黒い土が見えた。
ことしは、原油高の影響やエコグッズとして往年活躍した湯たんぽが見直されている。
なかでも、多治見焼きのむかしながらの湯たんぽが人気らしい。
小判型の表面に波のあるもので、生産のほうが追いつかないという。
取り扱いの利便さでは電気アンカにかなわないが、アンカは空気が乾燥してのどが痛くなることがあるが、湯たんぽはこの心配がない。
ここ数年暖冬だった。
去年の夏は、このあたりでも30度の真夏日がつづくという異常気象に見舞われた。
それが一転して、ことしの冬のこの寒さ。
それでも、この寒さは平年並みらしい。
冬は、本来こうなければ緊張感というものがない。
これも、自然の調整作用だろう。
「梅は~咲いたか、桜~はまだかいな?」
求菩提山