寅吉君 開眼(かいがん)か |
猟法:「一銃一狗」の古式単独猟法
猪犬:求菩提犬(くぼてけん)5期生の赤(6歳の♀)と預かり訓練犬の寅吉君(1歳の♂)
獲物:55㎏のメスイノシシ
預かり訓練犬の寅吉君の実戦訓練も、シーズンもあと残すところわずかとなりいよいよ最終段階にきた。
実戦訓練を振り返ってみると、シーズンの初めのうちは順調に猟果があがった。
ところが、3番勝負の際、負傷するというアクシデントにあい、その勝負では途中から戦線を離れた。
その後、この件が原因で虎吉君は心的障害すなわちトラウマになったようで、指導犬の八の後方5メートル辺りから吠えるようになった。
その距離から言って、獲物を自分の目で捉(とら)えて吠えているのではなく、現場の雰囲気からして緊急事態だと認識して吠えているのである。
その後、虎吉君の指導犬の八は1頭で順調に猟果をあげたが、虎吉君はめざましい活躍は見せなかった。
こちらとしても何とか虎吉君に大活躍をしてもらいたいのだが、その後は獲物との出会いに恵まれなかった。
きょうも指導犬は、八である。
きょうの山は、真竹の密生した山である。
真竹の密生した山は、ウラジロの密生した山よりましである。
ウラジロの密生した山では、犬の行動が自由にならずそのためイノシシに捕まってケガすることが多いからである。
八の吠え声がする。
自分より150メートル離れた場所である。
子尾根を下り、真竹の倒れた谷を渡る。
犬の吠え声がきこえない。
逃げられたか?
気はあせるが、目の前の子尾根に取りつく。
その子尾根に登ったが、犬の吠え声がしない。
しかし、この真竹の密生した谷で止めていることがわかった。
犬の口ごもった声はきこえる。
犬がイノシシを咬んでいるときに漏れるわずかな犬の吠え音である。
八も虎吉君も止めマークが出ているので、ここで2匹が咬んでいることがうかがわれる。
真竹の谷に降りて、寄りつく。
2匹がイノシシを咬んでいる。
2匹が離れる瞬間を待つ。
2匹の口が離れた。
そこを獲物の横顔を狙って撃つ。
獲物が沈んで、作戦終了だ。
きょうの虎吉君は上出来である。
しかし、単犬での勝負ではないので一人前の猪犬としてはまだまだ不安が残る。
幸い、先方さんにはいい先導犬がいるので、そこでさらに実戦訓練を積めば使える犬に成長するだろう。