追い止め芸の公開 |
(下腹部を食い破られたオスイノシシ)
猟法:見切りなし単独流し猟
猪犬:6期生の次郎(♂)とU(♀)それに仕込み中の7期生の八(♀)
得物:32.5㎏のオスイノシシ
きょうは、単独猟をしている猟師の方から「追い止め芸」を見たいとの要望があったので、C組の追い止め芸を公開する。
その猟師は、去年まで日本犬を使って「一銃一狗」の方式で、ここらあたりではで一番の猟果を上げていた猪猟の実力者である。
ところが、その犬が老衰で亡くなり、いまは若犬の仕込みに精を出している。
6期生の次郎(♂)とU(♀)は、昨シーズンから追い止めをやるようになった。
7期生の八(♀)は、まだ1歳3か月齢の仕込み中の犬で、このシーズンは2シーズン目となる。
この山には得物の跡がないので、向かいの山に場所を移動することにした。
そこで、一旦下の作業道まで降りる。
先に降りていった3匹が、作業道を車を止めた方へ下っていった。
まだ、帰る時刻ではないのに。
そこで、3匹を呼び戻すため犬笛を吹く。
すると、155m先から犬たちの吠え声がし出した。
犬たちは、獲物がいないとき吠え声を出すことはない。
となると、獲物がいることになる。
作業道に立っていると、作業道の左の高さ2mの崖上の雑木の中を犬より大きめのイノシシが走ってくるではないか。
そこで、撃ってみる。
もっとも止まっているイノシシにも当たらない腕前なので、当たるはずがない。
イノシシは作業道に飛び降り、谷に向かって走り、谷を渡って向かいの山を登っていった。
その後を、3匹が追ってきた。
仕込み中の八は、躊躇(ちゅうちょ)することなくイノシシを追って向かいの山に登っていった。
次郎とUは、イノシシが飛び降りた地点で匂い消えたのか臭腺をみつけるのに戸惑っている風(ふう)で、その地点を行ったり来たりする。
やっとイノシシが谷をめざして飛び降りたことがわかったようで、2匹して向かいの山に登っていった。
しかし、臭腺をさがしあてるまでに時間がかかってしまった。
先頭で追っていった八は、まだ1歳3か月齢の若犬なのでイノシシに追いつけまい。
次郎とUは、臭腺のつなぎに手間取りすぎたので、追いつくことはできないだろう。
ところが、向かいの山を越えた、谷の作業道で3匹が止めていることがわかった。
そこまでの距離は、平面図で270mである。
車で一旦県道に出て、県道を走ってその谷に入る。
すると作業道で、3匹が咬んで止めている。
イノシシの下腹部から、小腸が固まったまま飛び出ていた。
頸動脈を刺して作戦終了する。
得物が大きなイノシシであれば、下腹部を食い破ることは到底できない。
そうなれば、絡(から)んで止めることになる。
したがって、絡み止めになるか咬み止めになるかは彼我(ひが)の力関係次第ということになろう。
ちなみにこのイノシシを解体したところ、四肢が犬にかまれていて内出血しており、人間の食用には適さないものであった。
したがって犬のエサにしかならないので軒下に吊るし、毎日身を削(そ)いで煮込み、エサにして犬に食べさせている。