水泳訓練開始-1 |
例年より4日遅れている。
水泳訓練をすること自体を思いつかなかったは、うかつであった。
あまりのことしの暑さのため、頭がまわらなくなったようだ。
こちらが子どもの時分は、30°cという猛暑日は一年に1日か2日であった。
それが今はどうだ?
このところ連日35°cの猛暑日がつづいている。
以前とくらべると現在は異常気温で、これが恒常的となっている。
もともと日本の夏は亜熱帯気候で、「家の作りやうは、夏をむねとすべし。冬は、いかなる所にも住まる。暑き比わろき住居は、堪へ難き事なり」と徒然草にも書かれている。
ところで、なぜ犬に水泳訓練を強制するかというと、暑いので犬に涼しい思いをさせるためでもあるが、それ以上に犬に対して水に慣れさせるためである。
こちらでは、実戦で最終的にはイノシシを谷川、ダム、池やふもとの川に落とすことが多い。
その場合、犬は泳ぎが達者でないと目の前のイノシシをみすみす逃がしてしまうことになる。
まさに九仞(きゅうじん)の功を一簣(いっき)にかくことになる。
そこで、夢職庵(むしょくあん)では犬にとって水泳訓練は必須科目としている。
犬を1匹ずつ川にいれる。
まず、求菩提犬(くぼてけん)初代先犬のLeeである。
彼は水に入るのをためらっていたが、こちらが先に川に入って強引に綱を引っ張って川に引きずり込む。
ことしで4度目の夏になるので、水に入ってから泳ぐのはお手の物であるが、泳ぎは彼の得意科目とは言えない。
しかし、顔だけ水面に出し後ろ足も使って上手に泳ぐ。
この後ろ足を使うことができるかどうかが、犬の泳ぎの上手下手の決め手といえよう。
次は5期生のUである.
彼女も水に入るのは今年になっては初めてのことで、後づさりして水に入るのを拒否する。
それでも容赦なく首輪をつかみ、強引に川に引きずり込む。
おや! 前足を上げてドボンドボンと音を立て、しぶきを上げる。
そこで、首輪をつかんで体を沈めてやる。
このとき犬の正面に立たないようにしなければならない。
犬の正面に立つと、犬の前足でこちらの胸を引っかかれるからである。
裸の胸にとって、犬の爪は思ったより硬い。
そこで、首輪をつかんでいる手を伸ばすようにして間合いをとっている。
泳ぎの勘を取り戻したようで、うまく泳ぐ。
Uも去年から水泳訓練をしているので、これは当たり前のことである。
犬は泳ぎが上手になると、イノシシを上から咬んで水中に沈めるようになる。
このためイノシシは溺れ、戦意を喪失するに至る。
したがって、イノシシが水の中に落ちればいただきである。
こうなると鉄砲もいらなくなる。
犬は、グロッキーになったイノシシを咬んで陸まで引っ張っていく。
さらに陸につくと、一足先に陸に駆け上がり、そこから獲物を引っ張り上げる。
この動作はこちらが教えたものではなく、狩猟本能がそうさせるのであろう。
つぎは、4期生の赤である。
彼女は器用な犬で、泳ぎも無難にこなす。
かつての三本足のUの再来を思わせる。
最後は、6期生のAである。
昨年の6月生まれで夏には2か月しか経(た)っていないので、泳ぎの訓練は受けていない。
したがって、水泳の訓練を受けるのはことしが初めてである。
すんなりと水に入る。
ところがドボンドボンと派手な音を立ててしぶきを上げる。
そこで首輪をつかんで体を沈めてやる。
するとしぶきが上がらず、スムーズに泳ぐようになった。
こちらはその場を移動せず、こちらを中心としてこちらの周りを泳がせる。
Aは、うまく泳ぐようになった。
もともと四つ足は、泳ぎは上手である。
あの体の大きなカバでさえ泳ぐ。
そして、カバは水の中を安住の地として生活している。