1年4か月齢の4期生の追い止め |
(1年4か月齢の4期生に砂防堤下の淵で追い止めされた50㎏の♀イノシシ)
猪犬:求菩提犬初代先犬Leeの直子で1年4か月齢の4期生のロッキー(♂)と赤(♀)
獲物:50㎏の♀イノシシ
朝起きると、雨が降っている。
そこで、きょうは休猟とする。
ちょうどいい骨休めとなった。
ところが、午前10時ごろになって雨が止んだ。
しかし、この冬いちばんの冷え込みとなって外は風がつよくて寒い。
それでも山に行きたくなるので、いよいよ貧乏性に生まれついているようだ。
昼から、わが家から近くの山に入る。
東西に延びている大尾根に拓かれた作業道を歩く。
この尾根道を歩けば、風が北風なので犬は北側に寝ているイノシシの臭いをとるはずだ。
時間もないので、適当なところで大尾根から直角に右側に突き出た子尾根を歩き、途中から上り返して帰る算段をする。
すると、左側の斜面から2匹の吠え声がした。
起こしたぞ!
ところが、その吠え声が移動する。
鹿か?
いきなり逃げの一手なのは鹿の場合が多い。
ところが、ここから560メートルも先で止めているが、遠いので犬の吠え声はきこえない。
止めている以上、行ってやらねば犬との信頼関係が壊れる。
その止め場に急ぐ。
犬が、また移動する。
ということは、獲物は確実にイノシシである。
鹿であれば、犬に食い倒されるのでふたたび起き上がって逃げるということはないからである。
今度は、池の流れ込みで止めている。
一旦、作業道に降りて、これを伝ってのぼる。
犬の吠え声が、谷じゅうに響いている。
どうも、イノシシを池の流れ込みの谷に落としているようだ。
2匹は、左岸のコンクリートの上で下を向いて吠えている。
近づくと、砂防堤の下の淵にイノシシが浸(つ)かっている。
これなら、イノシシが逃げることはない。
そこで、動画をとる。
6か月齢の子犬の6期生のA(♂)は、この事態がのみ込めないらしく、吠えない。
動画を撮り終えたので、ここで淵の中にいるイノシシの顔面を狙って撃つ。
イノシシが倒れて、淵に浮かんでいる。
これを雑木を切って、竿(さお)にして岸にたぐり寄せる。
やっとこの段階になって子犬のA(♂)が、吠えだした。
遅いというのだ。
「なぜ、4期生の隣で吠えんのか」と叱る。
しかしこの6期生のA(♂)も、来年の今ごろには現在の4期生、5期生のような活躍をするまでに成長していることだろう。
それが楽しみで、毎年夏に生まれた子を手元に残している。
求菩提犬(くぼてけん)を絶やさないために、常に後継犬として3世代の♂♀各1匹ずつ確保するようにしている。
イノシシは、右首をかまれてその部分は禿(はげ)た状態になっている。
ロッキーは前胸を皮一枚切られているのは、砂防堤の途中の戦いのときの負傷であろう。
この犬は、生傷が絶えることのない犬である。
こうして一戦一戦場数を踏んで、若犬は成長を遂(と)げていく。
4期生は、これで5期生と遜色(そんしょく)のない活躍をするようになった。
しかし夢職庵(むしょくあん)四天王のうち半数の2匹は、このシーズン中に玉砕は避けて通れないだろう。
これも、求菩提犬(くぼてけん)として生を受けた犬の過酷な宿命というものであろう。