吠え止め、若犬を実戦で仕込む |
(Leeとその直子の5期生に吠え止めされ、倒された60㎏のオスイノシシ)
猪犬:求菩提犬先犬のLee(♂)とその直子で、ともに仕込み中の次郎(1歳3か月齢、♂)と二代目U(1歳3か月齢、♀)
獲物:オスイノシシ、60㎏
うちの近場の山は、とにかくシカが多い。
山の入り口で犬たちを放すと、もうシカを起こしたらしく一目散に追っていく。
犬たちは800メートルも追って行って、県道に降りた。
県道に降りると、ここは山間部なので通行する車は少ないのだがそれでも犬が交通事故に遭(あ)うという心配がある。
犬たちは県道を横断して、県道と並行している田んぼの中の畦道(あぜみち)を奥山の方向へ走る。
犬たちは止めている車の真横付近まで来たが、川を渡れないらしく、また来た道を戻っていく。
きょうは寒いので、待つ身ははつらい。
それでも我慢して、子尾根のでっぱりで犬たちの戻ってくるのを待つ。
犬たちが、戻ってきた。
ところがこちらに戻ってきている求菩提犬(くぼてけん)先犬のLeeが、こちらが座っている子尾根の先端部の真下で突然吠えだした。
はて、はぐれ鳴きか?
時々、Leeはこちらとはぐれたとき、オオカミのような遠吠えを発することが若犬のころからある。
しかし、今の吠え声は気迫のこもった吠え声なので、そのはぐれ鳴きとはちがう。
イノシシを起こしたのだ!
Leeの吠え声が、移動していく。
その吠え声が、県道と並行して海の方向へ移動している。
これは、イノシシが逃げていることを意味する。
そこで、こちらも犬たちの吠え声を頼りに子尾根を降りる。
さらに、犬たちの吠え声が遠ざかる。
そのうち、犬たちの吠え声が一か所から聞こえるようになった。
よし、追い止めたな。
そこへ寄りつく。
射撃が下手なので、一歩でも二歩でもイノシシに近づきたい。
雑木林の中で、イノシシの突進する音がする。
そこへ、寄りつく。
Leeと若犬の次郎とUが、イノシシを取り囲んで吠え立てている。
イノシシが尻をこちらに向けているのが藪越しに見えたが、これでは撃てない。
イノシシが、こちらを向くのを待つ。
Leeが吠えながら近づくと、イノシシが向きを変えてLeeと対峙した。
イノシシの右顔面を狙って渾身(こんしん)の一撃を見舞う。
イノシシが倒れた。
3匹がいっせいに飛びかかって、咬みつく。
これにて作戦終了だ。
60㎏のオスのイノシシである。
弾は、右目を正確に貫(つらぬ)いている。
距離5メートルなので、当たって当たり前である。
5期生の年少組も、あと何戦かLeeに付けて戦わせれば、仕込みはほぼ終了だろう。
当初は今年の暮れをその時期の目安にしていたが、この分だと予定より早くできあがりそうだ。
うれしい誤算といえる。
これでやっと、Leeを温存することができる。
実戦に数多く登板させれば、Leeは接近戦を得意とする犬だけに、いつ玉砕してもおかしくない。
リスクが大きいといえるが、それでも1週間に一度はLeeに登板する機会をつくってやらねば癇癪(かんしゃく)を起こすだろう。