サクラマス |
これは老朽化のため車の通行はできない。
人道のつり橋である。
ここで毎朝サクラマスを釣っている地元の人がいる。
ちょうど見に行ったら3本竿を出していた。
右岸側の竿先がゆれている。
「う、動いているですよ」
「ほんとうだ」
かれが、その竿に近づく。
ところが、竿先の動きがとまった。
「だめだ、かかってない」
という。
ところが、こんどは左岸側の竿先がぴくぴくと動く。
こんどは、こちらだ。
かれがしずかに竿に近づく。
竿を手に取った。
リールを巻く。
糸の先、水中に白い魚体が錐もみし、その都度きらきらときらめく。
サクラマスが掛かっている。
かれは、吊り橋の欄干の間を両手で繰りながら竿を右岸側に移動させる。
右岸側は、ゆるやかな河川敷になっているのでそこにサカクマスを上げる気だ。
そこへ、ちょうど長良川の美濃でただひとりになった川漁師の市橋さんが通りがかった。
かれが、タモをもって吊り橋を渡り、河川敷に降りてサクラマスをタモですくった。
橋の上で見るサクラマスは、体長32センチ、体高さ8センチである。
魚体は、銀々のきめ細かいうろこに、わずかにピンクがかったきれいな色をしている。
サカラマスを見るのは初めてのことだ。
いったん海へ戻り、ふたたび川をさかのぼってきたサクラマスだ。